なぜ日本では魚を生で食べられるのか?実はかなり危険と隣り合わせだった
まず結論:なぜ海外では生魚食が流行らなかったか。
結論から行きましょう。
「海外では、加熱が合理的だったから。日本では、生食を成立させる工夫と環境が積み重なったから。」

今回は魚の生食文化の話を少し深堀してみるで
海外で魚の生食が一般的ではない理由


まずは、アメリカを代表例にして生食の文化・考え方について解説。
寄生虫リスクを強く意識しているから
海外で魚の生食が広く定着しにくかった大きな理由のひとつは、生魚には寄生虫リスクがあるという前提が強いことです。
アメリカの CDC も、生または加熱不十分な魚やイカを食べるとアニサキス症のリスクがあるとしており、予防策として「生または加熱不十分な魚やイカを食べないこと」を案内しています。
つまりアメリカでは、「魚を生で食べるのはロマン」より先に、まず健康リスクをどう避けるかという発想が来ます。
そのため、魚はそのまま食べるより、火を通して安全に食べるものとして受け止められやすくなります。
そしてこの考え方が、生食よりも加熱を前提にした流通や販売の仕組みを育てやすくしてきたのです。
生食で出すには、店側の負担が大きいから
海外では、生魚の提供自体が一律に禁止されているわけではありません。
ただし、「生で出すなら追加の管理が必要」という考え方が強く、店や事業者に求められる責任は重くなりやすいです。
たとえばアメリカでは、FDA Food Code が小売・外食向けのモデルコードとして、生で提供する魚に凍結条件や記録保存などの管理を求めています。さらに、raw / undercooked の animal food については、consumer advisory(消費者への注意表示)を前提とする考え方も示されています。
つまりアメリカでは、生魚は「新鮮ならそのまま出せる食品」ではなく、ルールを守り、記録を残し、注意表示までして初めて提供できる食品として扱われるのです。
そのため、店の側から見ると、生魚は日常的に扱いやすい商品というより、手間も責任も重い商品になりやすいと言えます。
生食向けの魚が、当たり前には流通しにくいから
こうして生で出すための条件が重くなると、生産者や流通の側も、最初から生食向けの魚を広く回すより、加熱前提で扱える魚を中心に流通させやすくなります。
実際、アメリカで代表的に参照される FDA Food Code では、要冷蔵食品の管理温度として 5℃(41°F)以下 が基準になっており、生や半生で提供する魚については、寄生虫対策として -20℃で7日間、または -35℃で15時間 などの凍結条件が示されています。
ここで大事なのは、アメリカでは「新鮮そうに見えるから出せる」ではなく、生で出すなら追加の温度管理が必要という考え方が強いことです。
言い換えると、焼く・煮る前提であれば、生食ほど厳密な条件を求められにくく、扱う側にとってもその方が現実的です。
その結果、生でそのまま食べられる魚が日常的に出回りにくくなり、消費者の側でも「魚は火を通して食べるもの」という感覚が当たり前になっていきます。
つまり、生食が広がりにくい条件が積み重なった結果として、加熱文化が主流になったと考えられます。
日本で魚の生食文化が発展した理由

海に囲まれ、魚介への依存が高かったから
日本は海に囲まれた島国で、古くから魚介が重要な食料でした。
肉を日常的に大量に食べる文化が長く続いていたわけではなく、魚は身近なたんぱく源として生活の中に深く入り込んでいました。
つまり日本では、「魚をどう食べるか」は贅沢をする話ではなく、日常の暮らしの中で重大な課題であったのです。
そのため、魚を無駄なく、美味く食べる工夫が積み重なっていきました。
保存と加工の知恵が生食文化の土台になったから
日本では、最初から刺身が食文化の中心だったわけではありません。
冷凍技術がない時代、まず大きな課題だったのは、傷みやすい魚をどう保存し、どう食べるかでした。そこで発達したのが、発酵、酢締め、漬けといった技法です。
こうした工夫は、魚を長持ちさせるだけでなく、魚を傷ませにくく扱い、臭みや余分な水分を整え、食べやすい状態に仕上げる知恵の積み重ねでもありました。
つまり、日本の魚食文化は、まず「保存するための技術」と「おいしく食べるための技術」を一緒に育ててきたと言えます。
そのうえで、新鮮な魚がすぐ手に入る場所では、保存食として食べるだけでなく、傷む前に、より新鮮な形で味わう方向にも進みやすくなりました。
生食文化は、保存の工夫と無関係に突然生まれたのではなく、魚を安全に、そしておいしく扱う知恵の延長線上で育っていったのです。
港と都市が近く、新鮮な魚が手に入ったから
日本で生食文化が広がった大きな理由は、新鮮な魚が都市に届きやすかったことです。
とくに江戸のような大都市では、湾から魚が入りやすく、町には働く人々を支える手早く食べられる食事への強い需要がありました。日本政府観光局も、握り寿司が江戸で屋台の fast food として広がったと紹介しています。
また、都市では、しょうゆや酢のような調味料も手に入りやすく、新鮮な魚をおいしく食べる条件が奇跡的にそろっていました。農林水産省も、江戸前寿司では赤酢の飯や、ヅケ、酢締め、昆布締めなどの下ごしらえが発達したと紹介しています。
つまり日本では、新鮮な魚が届く環境と、それをおいしく食べるための調味や下ごしらえが都市で同時に整っていたため、生食が大衆庶民の食べ方として爆発的に広まったと考えられます。
我々が、生食するときに意識していること


というわけで江戸っ子魂を受け継いだウチらでやってる生食へのこだわりを紹介するやで。

我々香川県民やけどな….江戸っ子関係ないけどな….
生食で体調を崩す原因
魚の生食で体調を崩す原因は、筆者の中では大きく4つに分類して考えています。
①寄生虫のリスクがある場合
②温度管理、洗浄、器具の取り扱いなど衛生管理に問題がある場合
③取れた場所や周囲の環境に不安がある場合
④魚種そのものに毒性や危険性がある場合
生食の可否は、「新鮮そうに見えるか」だけでは決まりません。寄生虫リスク、扱い方のリスク、環境のリスク、魚種のリスクを分けて対策をしていくことが重要と考えています。
生食でお腹を壊さないための対策

今回は、海釣りでの話に絞るで。川魚の生食はまた別格の注意と覚悟が必要や。
①よく知らない魚は生で食べない

筆者がまず意識しているのは、よく知らない魚を安易に生で食べないことです。
見た目が似ている魚でも扱い方や注意点が違うことがあります。そのため、少なくとも次のような場合は生食を避けるようにしています。
- 名前や種類に自信がない時
- 似た魚との取り違えが気になるとき
- 生食向きかどうか判断できないとき
生食で大切なのは、「食べられるかどうか」よりも、無理をしないこと。これに尽きます。そして、本サイトでは、食用の正しい知識を得られるようにお魚図鑑を作成しております。※そもそも食べてはいけない種類の魚もいます。よく知識を持ったうえで調理を行いましょう。
歯の出た大型の魚(石垣鯛など)、フエフキダイ、亜熱帯地域以南の大型肉食魚(GT等)などは、シガテラ毒というプランクトン毒を持ちやすい種類が存在します。種類がわからないものに関しては、先ず「食べない」判断をすることも重要です。(※シガテラ毒は、加熱しても消えないので注意。)
②寄生虫リスクが高い魚種は釣り場で処理

寄生虫リスク(特にアニサキスが代表例)も生食時に気を付ける代表例です。
寄生虫(アニサキス)の多くは、新鮮な魚にも寄生していることが多くあります。基本的には内臓に住んでいることが多く、魚が弱った後、内臓から身に移動してくることが多いです。
アニサキスがつきやすい魚種について(特にサバ、アジ、イワシ、イカ)については、加熱の有無にかかわらずかいえんまるでは、なるべく早く内臓処理をすることにしています。
基本釣れた時点で内臓処理をし、冷蔵管理された環境(氷入りクーラー)で保管して持ち帰ります。温度も重要で、0~5℃で冷やしておくことで寄生虫の身への移動活動を抑えることができます。陸釣りの場合、周辺に残して帰らないよう細心の注意を払いましょう。最悪、釣り場の使用禁止になります。
また、酢やワサビでは、基本死ぬことはなく、調味料での対策は効果がありません。
小さくて内臓処理がめんどくさいもの(マメアジとか)に関しては、冷凍若しくは良く加熱をした状態で調理することがほとんどです。

ちなみに淡水魚(川魚)は、寄生虫リスクが別格で高い。食べられる種でも火を通すが基本やで!
③釣った後の冷却処理を適切に

生ものなので、釣った後の処理はかなり重要です。冷却処理を怠ると、釣りから帰ったころには、クーラー内で魚が傷んでしまい、加熱ですら食べられないなんてことにもなりかねません。
しっかり血抜きと氷で帰宅までの間保管をしましょう。
保存処理方法はこちらの記事を参照ください↓
【初心者さまガイド】釣った魚の締め方・保存方法~脳締めから血抜き・神経締め・保冷まで解説~|海燕丸のつりLabo!

クーラーボックス忘れて釣り行って、ビニール袋で持って帰って食ったら盛大に腹壊した淡い2020年の夏の記憶…..以降絶対氷2Lペットボトル凍らせたやつを忘れたことはありません。
④洗浄・温度管理・器具の扱いは、衛生管理の基本を崩さない

生食のリスクは、魚そのものだけでなく、人間側の扱い方でも大きく変わると感じています。
そのため、筆者は次のような衛生の基本を崩さないことを意識しています。
- 手や器具を清潔に保つ
- まな板や包丁もしっかり洗う。(できれば除菌まで)
- 温度が上がりすぎないようにする
- 周囲の清潔さを気にする
- 真水でしっかり洗う
- 加熱用の食材や汚れた器具と混ざらないようにする
特別な技術よりも、基本的な衛生管理を崩さないことの方が大事だと思っています。
刺身を作った後も、常温で放置せず、すぐに冷蔵庫の中に入れましょう。かいえんまるでは、調理開始時1番に生食用の調理を開始します。(なるべく冷えている状態、使用器具が汚れていない状態で調理するため)また、海水は雑菌だらけです。しっかり飲料用真水で洗いましょう。(日本の場合は水道水)
⑤採れた場所や周囲の環境にも気を配る
魚の状態がよく見えても、どこで採れたかを気にします。
水の状態や周囲の環境に不安がある場所で採れた魚は、生食には向きにくいと考えています。
かいえんまるで特に慎重になるのは、たとえば次のような場合です。
- 水の状態に違和感があるとき(油が浮いていないこと)
- 汚れや臭いが気になるとき
- 排水や濁りが目立つとき
- 環境の影響を受けやすい魚介類のとき(貝類とかは特に注意)
このあたりは、その場で完全に判断できるとは限りません。
だからこそ、少しでも不安があるなら避けるという考え方を大事にしています。

住宅地近くの漁港でネズミが海を泳いでたのを見てからは、さすがにちょっとその場で釣ったものはそっとリリースした記憶があるな….
⑥少しでも不安があるなら、加熱を選ぶ
最終的に、私がいちばん大事にしているのはここです。何度も繰り返しますが、
少しでも不安があるなら、生では食べない。
完全に自分ルールですが筆者の中では、次のどれかに当てはまるときは、無理に生食を選ばないようにしています。
- 魚種に自信がない
- 状態に違和感がある
- 処理や管理に不安がある(内臓処理が遅れた(8時間以上)魚)
- 採れた場所に不安がある
- 判断に迷いが残る
- 特定の魚種(小さくて内臓処理ができないもの)
小サバ、小アジ
生食は、無理に挑戦するものではなく、条件がそろっているときだけ選ぶ食べ方だと思っています。
だから私は、「生で食べる技術」以上に、やめる判断を大切にしています。
まとめ
日本の刺身文化は、「日本人だから生魚を食べられる」のではなく、
- 魚種選び
- 内臓処理(寄生虫対策)
- 温度管理
- 保存技術
こういった安全に食べる工夫の積み重ねで成立をします。海外では、加熱が合理的だったから。日本では、生食を成立させる工夫と環境が積み重なったから。日本食には生食の文化が根付いたのでした。
終いに!!

ほんで?実際せんちょは調理ミスって食中りしたことあるん?

2020年夏のクーラーなし釣行だけかな……トイレは友達!!

んーどんまい!(基本的な衛生観念云々いう資格あるかこれ….)
みんなご飯の前はしっかり手ぇ洗っていただきます言えよ!食材のせいじゃないことも多々あるぞ!(夏のクーラーなしはただの猛者。)
※本記事は、海釣りで実際に釣った魚を調理している経験をもとに、安全面へ配慮しながら作成しています。
